兵庫県尼崎市
◎保育所の民営化(移管)の取組み状況について
(1)保育所移管に係る経緯について
・H5.4.28 尼崎市行政改革審議会答申として
保育所の統廃合、公立保育所を民間へ移管という方針が出される。
・H6.4.1 検討機関として企画担当を設置
・H7.9.1 平成10年度より毎年2ヶ所づつ5年間で10ヶ所の公立保育所を民間社会福祉法人に移管することを決定。
・H8.8.23 移管対象10保育所、方法、条件等を発表するとともに説明会を開始。
・H8.12.20 尼崎市保育所条例一部改正条例(案)可決
委員会での採決は賛成5、反対3であった
・H9.3.1 移管対象10所中4所について公募
・H9.7.2 移管法人決定(既設法人2、新設法人2)
・H10.2.6〜 平成10年度移管保育所業務等引継ぎ
・H11.4.1 2所移管。法人による運営開始
移管対象10所中残りの6所について決定
選考の結果にについては評価点まで公表している。どこが何点かは非公開。
移管選出基準は、鉄筋コンクリート造りで児童数が比較的安定し、近隣に私立保育所がない一般保育所。
方法は、土地は無償貸与。建物、備品等は無償譲渡。
条件は、幼児保育、延長保育を実施し、障害児保育に積極的に取り組むこととした。
※ 残る公立保育所についても延長保育、障害児保育を順次実施。
移管保育所の整備として乳幼児保育の実施に伴い、沐浴室や調乳室を整備し、修繕を必要とするところを改修。一箇所あたり約200万円の修繕費。
(2)保護者の反応等
父母の会としては特色はなくてもいいので今までと変えないで欲しいという意見がある。
保育士の待遇面から一度に退職された事例があり保護者からは戸惑いがあったことも。
園長さんが身内の介護で園に出てこない園長さんがおられ園長さんを変えてほしいという声もあるが、選考委員会で決定したことなのでなかなか難しい。
(3)移管に伴う条件及び問題点等について
配置転換については事務職が所長をやっていたこともあり当初は異動ができた。
市の財産を民間に渡していいのかという意見もあった。
また、保育の低下の危惧もあった。
公立では保育士の平均年齢43歳、私立では平均年齢25歳という状況を考えると移管後の保育士の雇用の問題があると思われる。
(4)移管による効果等
人員減 (見込み)(単位:人) 経費効果 (見込み) (単位:百万円)
職種
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人数
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所長
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10
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保育士
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94
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調理師
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20
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合計
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124
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区分
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金額
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減
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移管による人件費等
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1,200
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増
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移管法人への措置費(運営費)
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590
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保育機能充実経費
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270
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差 引 (減−増)
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340
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経費効果として平成14年度以降で毎年約3億4千万円の経費削減が見込まれる。
(5)今後の検討課題について
公立の保育士の新規採用が全くなくなる。
ポストが減ることにより人事の停滞。
軽量鉄骨プレハブの14所がそろそろ建て替えが必要となってきている。→民間委託する検討中
工業地域の南部の保育所は空きが多い。
住宅地域の北部は空きがない。→財政的に新設は厳しい。
待機児童も増え、統廃合の話しはなくなった。
(6)その他
公立、私立幼稚園との現段階では交流は全くない。
サービス内容として公×民の差は少なくなってきた。
保育所以外に建物の転用はできない。
使い勝手が悪く施設を改良するのはいい。
少子化の影響で公立幼稚園24から18園にする。
公立は4,5歳。私立は3歳保育をやっている。
(7)豊田市への展開
保育所でも何でもそうですが、民営化(民間委託、移管)する理由は何かということが問題です。国政の問題で言えば最近では郵政3事業の民営化であったり、以前で言えば国鉄や電電公社等それぞれの理由があったはずです。豊田市では、給食センターの財団委託が進み、主に人件費の面からの推進がされてきたように思います。この総括をここでするのは適切でないので避けますが、豊田市において保育園、幼稚園を公設民営化する場合の理由としては、やはり、人件費からの経費削減が理由になるのでしょう。
尼崎市の手法では事実、経費削減ができたようですが、民間移管後に保育所の保育士が、一定年齢になると辞めざるを得なくなる状況が作られているようです。民間移管後に人件費を抑えようとすれば当然のように若い保育士を多用するでしょうし、実際に平均年齢25歳という状況をみれば肩たたきがあるのは暗黙の了解になっているのでしょう。果たしてこれでいいのでしょうか。移管する際にはその園で勤務されていた方は、そのままの継続採用ではなく新規採用になるため辞めてもらわなければならない。同じサービス(保育)内容なら経費がかからないほうがいいという意見もありますが、雇用の問題も考えるともっと多くのことを考える必要がある。
本当に豊田市では、公設民営化すべきなのだろうか。経費削減ということなら他に削減できることもあるかもしれない。当然、労組との交渉も慎重にすすめなければならない。なにより、子どもたちにとってマイナス面があってならないように配慮することは言うまでもない。
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