情報公開先進都市、川崎市における
           情報公開条例運用について

1、 請求件数の推移、傾向について
 
 別紙参照  請求件数は増加傾向
H10年度の拒否278件のうち文書不存在(226件)も多い。
内容については、土地開発公社関係文書、保養所不要論議により保養所関係文書が突出。
個人名、口座番号、印影などについて一部非公開(一部公開)が多い。

2、 公文書公開運営審議会について

川崎市にあって豊田市にない制度(組織)がこの公文書公開運営審議会である。本市における今後の情報公開条例制度のあり方を考える上で外す事のできないこの公文書公開運営審議会について情報公開制度の先進都市である川崎市の事例で考えてみたい。

1)公文書公開運営審議会の役割
@社会的障害を生ずるおそれのある情報である場合に関係機関から意見聴取
               (川崎市情報公開条例第7条1項3号カ)
A公文書公開制度の運営に関する重要事項について、実施機関の諮問に応じ調査審議する。      (川崎市情報公開条例第16条2項)

2)公文書公開運営審議会の委員選出方法について
@市民代表          計8名
  地域活動
  商工会
  労働界
  医師会   からの推薦で6名
  公募市民          2名   
     広報等で募集。別紙、公募要領参照   小論文提出
                    (申し込み資格)
◆ 20歳以上のもの
◆ 本市に引き続き1年以上居住している者
◆ 本市の付属機関等の委員になっていない者
◆ 市職員でないもの。(退職職員は除く)

現在の委員の応募者は男性5名、女性1名(選考された方、男性1名、女性1名)
                     (選考方法)
川崎市公文書公開審議会公募委員選考委員会を設置し、書類選考等により選考。

A学識経験者        計7名
  弁護士            2名
  大学教授           5名 
3)委員をやっていただける人材は確保できているのか
個人情報保護審議会にお願い。また、本市とかかわりの深い方にお願いする。
今まで特に支障はない。
任期切れの場合、前任者に推薦頂く。

現在の審議会委員はH10.10/18〜H12.10までが任期。
   
4)公文書公開運営審議会の開催状況について
別紙参照      年間4,5回実施。H10年度は5回実施。       

5)審議会では内容についてどのレベルまで内容を把握しているのか
別紙参照 
案件によって審議会で公開、非公開を検討する。
その他については運営状況報告。
審議会会議は基本的に公開。(案件によって非公開)     
判断は、会長が委員に諮って会議の公開、非公開を決定。


3、公文書公開審査会について
1) 同審議会の委員選出方法について(条例にない部分の)
本市とかかわりの深い方にお願いする。
任期切れの場合、前任者に推薦頂く。
      現在
大学教授    2名
弁護士     2名
マスコミ関係  1名   (神奈川新聞論説員)

2)委員をやっていただける人材は確保できているのか
幸いにして人材確保できている。近隣都市からも羨ましがられている。
  
3)審査会の公開は
原則非公開で、口頭意見陳述の際、本人が求めれば口頭意見陳述の時だけ公開できることもある。
(申請人と同席していれば保佐人も出席可)

4) 審査会に対する市民の評価
案件によっては異議申し立て後1年半くらいかかっているものもあり、委員は最大限の努力はしているが苦情もある。

5) 不服申し立ての対応について
@審査会のみで審議し、審議会は一切タッチしないのか。
独立した機関であるため互いに干渉しない。
A不服申し立てに対する決定に対して訴訟問題に発展したものは。
土地開発公社関係の訴訟が1件あるが、全面撤回し、全部公開にしたため取り下げ。


4、現状の条例運用全般について
1)市民の評価は
おおむね良好、批判的な意見はほとんどない。(行政情報課 長谷川主幹)
後日、川崎市民 奥津茂樹氏(情報公開を求める市民運動事務局長)からお話を伺っても悪く言う人はいないという評価でした。

2)現状の問題点と今後のあり方について  

「原則公開という考えの下、条文に謳われていなくとも公開するよう最大限の努力をし、運用してきたが、今後は、実際の運用を条文化するように変更を検討する時期にきている。
川崎市情報公開条例は、H59年に施行以来、時代が変わろうと国の情報公開法ができようとも、一度も条例改正しなくとも対応できたが、今後は、現行の条例の条文では公開できない録音テープやFDなどの電子情報の開示についても条文変更を含めて検討していかなければならないし、情報化社会に対応できる、市民に開かれた情報公開制度にしなければならない。」
と対応して下さった総務局 情報管理部 行政情報課主幹の 長谷川さんは、語られた。

5、豊田市の情報公開条例運用の比較と今後の展開について
今回の視察では、運用面について主に話を伺い、調査させていただいた。事前に調べた条例は、豊田市と比較すると本当にS59年に施行した条例なのかと思えるくらい市民本位で進んだ条文となっており、実はこの通りの運用ができているのか疑心暗鬼であった。
しかしながら、川崎市は条例の条文の良さもさることながら運用面でも基本的に公文書は公開の原則を貫いているようで、訴訟で争ったケースはなく、市民もほぼ満足されていたようである。川崎市民で「情報公開を求める市民運動」事務局の奥津茂樹氏さえ、運用面でも高い評価をされておられた。
 豊田市では、まず条文としてまだまだ完成度の低い条例でH11年7月施行というのが恥ずかしいくらいの条文である。例えば、今日の施行条例の多数が「市民の知る権利」や「市の説明責任」を条文の中で明文化しているのに対して本市は、あえて明文化を避けている。
 また、請求者にしても市との直接的な利害関係者だけとしているあたりは、できる限り情報は出したくないのではないかと思えてしまい、人口35万人の中核都市としては非常に恥ずかしいことである。今や多くの自治体が条例の中で「市民の知る権利や市の説明責任」を明文化すると同時に請求者は「何人も」としている。豊田市についても市民への情報提供、情報公開の先駆的な都市となるよう、まずは条例改正し、基本的に公文書は公開を原則とするよう運用しなければならない。そのためにも我々議員が、積極的に市当局に働きかけなければならない。
ただし、いくら情報公開の時代とは言え、個人情報の保護については守るべきものはしっかり守っていかなければならないことは言うまでもない。