八女西部クリーンセンター視察報告書


1、八女西部広域事務組合の概要

     八女市、筑後市、大川市、城島町、大木町、三瀦町、立花町、広川町で構成
         大川市、大木町は可燃ごみは別で処理

     面積:291.46ku

    「八女・筑後地域広域市町村圏」は、八女市、筑後市、黒木町・立花町・広川町・上陽町・星野村・矢部村の8市町村。

2、建設の経緯

   既設ごみ処理施設の老朽化、ごみ量増大に伴う処理能力不足及び最終処分場の延命化を図るために新設計画を行う。

    平成3年から方式の選定に入り当初はストーカー炉+溶融方式で検討していたが、RDF、直接溶融方式、熱分解溶融方式のそれぞれを検討することになる.

  検討委員会の設置はせず、組合議会全員協議会において検討、決定、平成810月整備計画を提出。

    埋め立てはごみ量の4.4~4.5%
    燃料は立ち上げ立ち下げ時のみ
    アルミは溶けないで回収できる
     スラグの質が安定しているため有効利用できる 等

3、機種選定にあたっての重視点

   不燃残渣が処理でき、埋め立て必要量が少ないこと
   資源循環型社会にマッチした方式であること
  ダイオキシン類等の発生抑制に優れていること
   建設費及び維持管理費が安価であること
これらのことから熱分解ガス化溶融方式に決定

4、施設建設スケジュール

方式・用地選定−地元同意−環境アセス・地質調査−各種計画書作成−構造指針外協議−整備計画書−構造指針外回答−国庫補助金内示−入札−議会議決−着工−実施設計−各年度補助申請−各年度実績報告−竣工

5、用地の選定

組合では清掃工場、火葬場、最終処分場を各市町で分担するという取り決めがなされ、清掃工場は筑後市となっていた。そして、筑後市で検討する上で@既存の施設と相互利用できること、

A15〜20年後の再度の建て替え時に新たな用地確保が必要ないこと、の要件を満たす4箇所を検討し、選定した。

6、地元対策

    公民館整備、道・水路等の住環境整備を実施

7、クリーンセンター概要

    敷地:約28,000u(建設用地:約20,000u)
    余熱利用:発電(規模 1,950kw

熱分解ガス化溶融施設

  処理能力:220t/24H110t/24H×2基)

リサイクルプラザ
 50t/5H
建設費と内訳(施工監理費込み、用地費除く)

全体

ごみ処理施設

粗大ゴミ施設

総事業費

10,158,750

9,129,015

1,029,735

国庫補助金

1,200,410

1,057,597

142,813

起債

8,488,500

7,647,600

840,900

一般財源

469,840

423,818

46,022

8、収集段階における分別基準

ごみ → 熱分解ガス化溶融施設
可燃ごみ、不燃ごみ、粗大ゴミ(再生可能なものは工房へ)
資源ごみ → リサイクルプラザ

びん類(自動色選別機で5色に)、缶類(選別機でアルミ・スチールに)、ペットボトル、トレイ、飲料用紙パック、ダンボール、新聞、雑誌、古布、乾電池

工房 → 住民参加型で古本工房、裁縫工房、石鹸工房、(家具・自転)再生工房等がある

9、H12年度クリーンセンター稼動状況
稼動日数365日(1系 216日、2系 234日)

3〜4ヶ月で交互運転  85日は両方稼動

10、排出物処理状況
   鉄・アルミ:プレス後にそれぞれ全量有償にて再資源業者に売却
  ス ラ グ:全量有償にてアスファルト舗装業者に売却(定期的な溶出試験を実施)
   飛   灰:全量再溶融スラグ化処理を実施(2段バグフィルター方式)
   脱塩残渣 :セメント固化し、最終処分場に埋め立て
 発   電:基本は場内利用。余剰が発生した場合、地元電力会社に売電

12年度実績は10,051Mwh

11、排ガス濃度実績

平均値

保証値

Hcl

37~40ppm

50ppm

SO

1~2ppm

50ppm

NOx

72~80ppm

100ppm

CO

0~1ppm

10ppm

ばいじん

0.000g/?N

0.01g/?N

ダイオキシン類

0.016ng-TEQ/?N

0.1ng-TEQ/?N


重金属類については国の基準がないためノンデータ

12、地元への理解活動

各集落(用地に隣接する5集落)に対策委員会等を設置してもらい、全体説明会と対策委員会の交互説明会にて必要性、公害対策、透明性に努め、約16ヶ月の間に200回以上の集落説明会を開催し、住民同意、用地取得を行った。

本稼動以降も各集落に環境保全委員会を設置してもらい、定期的な会合を実施し、排ガスデータ等の公開をしている。工場入り口にも電光掲示板を設置。

13、ごみ質

紙ごみ:52.2%、ビニールごみ:30%、生ごみは10%以下

14、補助燃料の使用状況

炉の立ち上げ、立ち下げ時及び小動物焼却炉に灯油を使用(12年度時実績:1,191kl

15、その他のランニングコスト

人件費を除いて約3,400円/t

人件費は23名委託で1700万円/年、と事務局職員

16、イニシャル・ランニングコストの各自治体負担額

可燃ごみは建設・経常経費ともに平等割10%、処理量割90%。

17、視察を終えて

 今回の視察では大変お忙しいにもかかわらず丁寧に対応、説明を頂きました。本当に感謝で一杯です。しかし、何かしっくりこないのです。当然と言えば当然なのですが、あまりに完璧すぎて怖いのです。私は以前から豊田市の新清掃工場のガス化溶融炉導入はあくまで慎重にすべきだという主張をしてきました。今でもその考えに変わりはありません。このシステムがカタログどおり、額面どおりであればこんなにすばらしいシステムはないと思います。しかし、かつてもてはやされたフロンガスは温暖化の原因として代替化が進んでいます。現在は悪者扱いされているPCBも以前はこんなにすばらしいものはないと積極的に使用されていました。

 こうして考えますと、今まで安全とされていたのもが、危険であることが分かることもあるし、今までの常識が、将来の非常識になる恐れもあるのです。ですから、現在スラグは安全ですよと大量に使用していたものが将来は危険極まりないものの1つとされる可能性も十分あるのです。そんな可能性のあるものを道路や建設資材として使おうという溶融スラグ化はとても危険であるといわざるを得ない。

 そうしたものを大量に生産することになるガス化溶融炉に対して私は消極的にならざるを得ないというのが今の正直な感想である。この八女クリーンセンターも豊橋市の新清掃工場も何事もなく稼動しつづけることをただただ願いつつ、安全性、安定性、コスト面等トータルで考えると豊田市の新渡刈清掃工場はストーカー炉方式で建設すべきだというのが私の現在の判断である。